はじめに
本資料は、退院・退所加算の算定に向けた前提となる情報を把握するために活用いただく資料となっています。
具体的な解釈や申請等については、公表されている最新情報をもとに、所轄官庁へお問い合わせいただきますよう何卒宜しくお願い致します。
退院・退所加算とは?
退院・退所加算とは、「医療機関を退院」または「介護施設等を退所」して、自宅等に戻り、 在宅生活に移行する利用者について、入院中・入所中の情報提供を受け、介護サービスの調整 等を行うことを評価する加算として設けられています。
厚生労働省の介護給付費実態統計によると、平成31年4月サービス提供分の事業所ベースの 算定率は、退院・退所加算(Ⅰ)が『23.69%』、退院・退所加算(Ⅱ)が『9. 1%』、退院・退所加算(Ⅲ)が『1.13%』となっています。
令和3年度の介護報酬改定では、退院・退所加算の面談の方法の一つとして『テレビ電話装置 等の活用』が認められ、また、算定要件の一つであるカンファレンスにおいて、『福祉用具貸 与が見込まれる場合、必要に応じて福祉用具専門相談員等が参加すること』が明確化されまし た。
それでは、介護報酬改定の変更点も含めて、退院・退所加算の算定要件や留意点などについて 見ていきましょう。
退院・退所加算の単位数
| 加算の種類 | 単位数 |
| 退院・退所加算(Ⅰ)イ | 450単位/回 |
| 退院・退所加算(Ⅰ)ロ | 600単位/回 |
| 退院・退所加算(Ⅱ)イ | 600単位/回 |
| 退院・退所加算(Ⅱ)ロ | 750単位/回 |
| 退院・退所加算(Ⅲ) | 900単位/回 |
加算の種類 単位数
●退院・退所加算は、入院または入所期間中につき1回を限度として算定することができます。
●退院・退所加算(Ⅰ)イ・ロ、(Ⅱ)イ・ロ、(Ⅲ)は、併算定することができません。
●初回加算を算定する場合、退院・退所加算を算定することができません。
●介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設において、在宅・入所相互利用加算を算定する場合、退院・退所加算を算定することができません。
退院・退所加算の算定要件
退院・退所加算(Ⅰ)イの算定要件
| 退院・退所加算(I)イの算定要件 |
| ●退院・退所にあたり、医療機関等の職員と面談(テレビ電話等の活用可)を行うこと。●医療機関等の職員から利用者に係る情報の提供を『カンファレンス以外の方法』により、『1 回』受けていること。 ●必要な情報を得たうえで、ケアプランを作成し、居宅サービス・地域密着型サービスの調整を行っていること。 |
| 退院・退所加算(I)ロの算定要件 |
| ●退院・退所にあたり、医療機関等の職員と面談(テレビ電話等の活用可)を行うこと。 ●医療機関等の職員から利用者に係る情報の提供を『カンファレンス』により、『1回』受けていること。 ●必要な情報を得たうえで、ケアプランを作成し、居宅サービス・地域密着型サービスの調整を行っていること。 |
退院・退所加算(Ⅱ)イの算定要件
| 退院・退所加算(II)イの算定要件 |
| ●退院・退所にあたり、医療機関等の職員と面談(テレビ電話等の活用可)を行うこと。●医療機関等の職員から利用者に係る情報の提供を『カンファレンス以外の方法』により、『2 回以上』受けていること。 ●必要な情報を得たうえで、ケアプランを作成し、居宅サービス・地域密着型サービスの調整を 行っていること。 |
| 退院・退所加算(II)ロの算定要件 |
| ●退院・退所にあたり、医療機関等の職員と面談(テレビ電話等の活用可)を行うこと。 ●医療機関等の職員から利用者に係る情報の提供を『2回以上』受け、うち『1回以上はカン ファレンス』によること。 ●必要な情報を得たうえで、ケアプランを作成し、居宅サービス・地域密着型サービスの調整を 行っていること。 |
退院・退所加算
| 退院・退所加算(III)の算定要件 |
| ●退院・退所にあたり、医療機関等の職員と面談(テレビ電話等の活用可)を行うこと。 ●医療機関等の職員から利用者に係る情報の提供を『3回以上』受け、うち『1回以上はカンファレンス』によること。 ●必要な情報を得たうえで、ケアプランを作成し、居宅サービス・地域密着型サービスの調整を 行っていること。 |
| 退院・退所加算の対象となる医療機関等とは? |
| ●病院 ●診療所 ●介護老人福祉施設 ●介護老人保健施設 ●介護療養型医療施設 ●介護医療院 ●地域密着型介護老人福祉施設 |
退院・退所加算の算定要件の比較
| 算定要件 | (Ⅰ)イ | (Ⅰ)ロ | (Ⅱ)イ | (Ⅱ)ロ | (Ⅲ) |
| 医療機関等の職員と面談 | 要 | 要 | 要 | 要 | 要 |
| 情報提供の回数 | 1回 | 1回 | 2回 | 2回 | 3回 |
| うち、カンファレンスによる回数 | 不要 | 1回 | 不要 | 1回 | 1回 |
| 居宅サービス等の調整 | 要 | 要 | 要 | 要 | 要 |
このように、加算の区分の違いは 『情報提供の回数』 『情報提供の方法(カンファレンス・カンファレンス以外)』 となっています。
カンファレンスの定義
【チェックポイント】
退院・退所加算の指導では、面談の方法が『カンファレンスの要件を満たしていない』という 指摘がとても多いです。カンファレンスの要件をしっかりと確認しておきましょう。
| 病院・診療所 | 診療報酬の算定方法別表第一医科診療報酬点数表の退院時共同指導料2 の注3の要件を満たし、退院後に福祉用具の貸与が見込まれる場合にあっては、必要に応じ、福祉用具専門相談員や居宅サービスを提供する作業療法士等が参加するもの。 |
| 介護老人福祉施設 | 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第7条第6項 及び第7項に基づき、入者への援助及び居宅介護支援事業者に対する情報提供等を行うにあたり実施された場合の会議。ただし、基準第2条に掲げる介護老人福祉施設に置くべき従業者及び入所者又はその家族が参加するものに限る。 |
| 介護老人保健施設 | 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並び運営に関する基準第8条 第6項に基づき、入所者への指導及び居宅介護支援事業者に対する情報提供等を行うにあたり実施された場合の会議。ただし、基準第2条に掲げる介護老人保健施設に置くべき従業者及び入所者又はその家族が参加するものに限る |
カンファレンスの定義
| 介護療養型医療施設 | 健康保険法等の一部を改正する法律附則第130条の2第1項の規定によ りなおその効力を有するものとされた指定介護療養型医療施設の人員、設備及び運営に関する基準第9条第5項に基づき、患者に対する指導及び居宅介護支援事業者に対する情報提供等を行うにあたり実施された場合の会議。ただし、基準第2条に掲げる介護療養型医療施設に置くべき従業者及び患者又はその家族が参加するものに限る。 |
| 介護医療院 | 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準第12条第6項 に基づき、入所者への指導及び居宅介護支援事業者に対する情報提供等を行うにあたり実施された場合の会議。ただし、基準第4条に掲げる介護医療院に置くべき従業者及び入所者又はその家族が参加するものに限る。 |
| 地域密着型介護老人福祉施設 | 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準第 134条第6項及び第7項に基づき、入所者への援助及び居宅介護支援事 業者への情報提供等を行うにあたり実施された場合の会議。ただし、 基準第131条第1項に掲げる地域密着型介護老人福祉施設に置くべき従 業者及び入所者又はその家族が参加するものに限る。 |
退院・退所加算の留意点
●利用者・家族が参加する医療機関等の職員との面談において、テレビ電話装置等を活用する場合、テレビ電話装置等の活用について利用者・家族の同意を得る必要があります。
●テレビ電話装置等を活用する場合、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守することが求められています。
●同一日に必要な情報の提供を複数回受けた場合やカンファレンスに参加した場合でも、情報 提供を受けた回数は『1回』として算定します。
●原則として、退院・退所前に情報を得ることが望ましいとされていますが、退院後7日以内 に情報を得た場合でも退院・退所加算を算定することができます。
●カンファレンスに参加した場合は、カンファレンスの日時、開催場所、出席者、内容の要点等について、居宅サービス計画等に記録し、利用者・家族に提供した文書の写しを添付する必要があります。
2退院・退所加算を算定するまでの流れ
| 医療機関等から退院・退所の連絡を受ける。 |
| 情報提供のための面談のスケジュールを調整する。※テレビ電話等の利用の有無を確認する。 |
| 情報提供のための面談を行う。(カンファレンス・カンファレンス以外) |
| ケアプランを作成し、居宅サービス等の調整を行う。 |
| 利用者が退院・退所し、居宅サービス等の利用が開始する。 |
| 退院・退所加算を算定する。 |

このコンテンツは
令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成致しております

