はじめに
訪問看護を行う介護事業者であれば押さえておきたい制度に「特別管理加算」があります。
この資料は、特別管理加算の算定となる情報を把握するために活用いただく資料となっています。
具体的な解釈や申請等については、公表されている最新情報をもとに、所轄官庁へお問い合わせいただきますよう何卒宜しくお願い致します。
特別管理加算とは?
特別管理加算とは、特別な管理を必要とする利用者に対して、計画的な管理を行うことを評価する加算です。
令和元年12月時点での算定率は、特別管理加算(I)が『69.8%』、特別管理加算(II)が『68.9%』となっていて、多くの事業所が特別管理加算を算定している状況です。
そして、特別管理加算は、看護体制強化加算の算定要件の一部にもなっている加算です。
令和3年度介護報酬改定では、特別管理加算の単位数や算定要件に変更はありませんでしたが、看護体制強化加算の算定要件である「特別管理加算を算定している利用者の割合」に変更がありました。
このことからも、特別管理加算を算定する事業所が増えることが予想されます。
それでは、特別管理加算の単位数、算定要件、算定までの流れについて見ていきましょう。
特別管理加算の単位数
加算の区分単位数
| 加算の種類 | 単位数 |
| 特別管理加算(Ⅰ) | 500単位/月 |
| 特別管理加算(Ⅱ) | 250単位/月 |
【【参考】
●特別管理加算(I)の対象となる利用者が月に40人いる場合
40人×500単位×@10円 ⇒ 1月あたり20万円
●特別管理加算(II)の対象となる利用者が月に40人いる場合
40人×250単位×@10円 ⇒ 1月あたり10万円
特別管理加算の算定要件
●特別な管理を必要とする利用者(※)に対して、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行っていること。
●利用者や居宅介護支援事業所が訪問看護事業所を選定する上で必要な情報として届出していること。
●訪問の際、利用者の症状が重篤だった場合、速やかに医師による診療を受けることができるように支援すること。
●「真皮を越える褥瘡の状態」の利用者に対して特別管理加算を算定する場合は、1週間に1回以上、褥瘡の状態の観察・アセスメント・評価を行い、褥瘡の発生部位と実施したケアを訪問看護記録書に記録すること。
●「点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態」の利用者には、点滴注射が終了した場合その他必要が認められる場合には、主治医に速やかに利用者の状態を報告し、点滴注射の実施内容を訪問看護記録書に記録すること。
※(I)と(II)では、算定の対象となる『利用者の状態』に違いがあります。
特別管理加算の算定要件
| 特別管理加算(I)における『特別な管理を必要とする利用者』とは? | |
| ●在宅悪性腫瘍等患者指導管理 | ●気管カニューレの使用 |
| ●在宅気管切開患者指導管理 | ●留置カテーテルの使用 |
| 特別管理加算(II)における『特別な管理を必要とする利用者』とは? | |
| ●在宅自己腹膜灌流指導管理 | ●在宅自己疼痛管理指導管理 |
| ●在宅血液透析指導管理 | ●在宅肺高血圧症患者指導管理 |
| ●在宅酸素療法指導管理 | ●人工肛門、人口膀胱の設置 |
| ●在宅中心静脈栄養法指導管理 | ●真皮を越える褥瘡の状態 |
| ●在宅成分栄養経管栄養法指導管理 | ●点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態 |
| ●在宅自己導尿指導管理 | |
| ●在宅持続陽圧呼吸療法指導管理 | |
| 『真皮を越える褥瘡の状態』とは? |
| 『真皮を越える褥瘡の状態』とは、以下のいずれかに該当する状態です。●NPUAP分類III度●NPUAP分類IV度●DESIGN分類(日本褥瘡学会によるもの)D3●DESIGN分類(日本褥瘡学会によるもの)D4●DESIGN分類(日本褥瘡学会によるもの)D5 |
| 『点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態』とは? |
| 『点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態』とは、以下の状態を指します。●主治医が点滴注射を週3日以上行うことが必要である旨の指示を訪問看護事業所に行っている。●事業所の看護職員が週3日以上点滴注射を実施している。 |
特別管理加算を算定するまでの流れ
①体制の構築 | ●24時間連絡体制の構築●特別管理加算に対応する職員体制の構築●医療機関等との密接な連携体制の構築 |
②所轄官庁への届出 | ●介護給付費算定に係る体制等に関する届出書●介護給付費算定に係る体制等状況一覧表●特別管理加算に係る届出書●従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表 |
③利用者・家族への説明 | ●重要事項説明書の変更●利用者・家族へ説明し、同意を得る |
体制の構築
| 体制構築のポイント |
| ●オンコール体制や夜間の勤務体制など、事業所で採用する体制を明確化する。(オンコール体制を採用する事業所が多い。)●オンコール手当や夜勤手当を給与規程等に定める。●オンコール体制に使用するスマートフォン等を準備する。●固定電話回線からスマートフォンへ転送ができるように準備する。●オンコール対応についてのマニュアルを整備する。 |
| おすすめポイント |
| スマートフォンと合わせて『タブレット』を導入することで、電話応対時に利用者の情報を確認しながら通話することができるのでとても便利です。 |
所轄官庁への届出
| 【提出書類】 |
| ●介護給付費算定に係る体制等に関する届出書●介護給付費算定に係る体制等状況一覧表●特別管理加算に係る届出書※書類名等は例示です。具体的な提出書類は所轄官庁へお問い合わせください |
| 【特別管理加算に係る届出書の記載内容】 |
| ●24時間常時連絡できる体制の有無。●当該加算に対応可能な職員体制・勤務体制の有無。●病状の変化、医療器具に係る取扱い等において医療機関等との密接な連携体制の有無。 |
利用者・家族への説明、同意
契約の重要な事項を説明するための書類である重要事項説明書には、事業所が算定する加算について記載する欄があります。新たに特別管理加算を算定することになった場合、重要事項説明書に記載し、その内容を利用者・家族へ説明し、同意を得ることになります。
【重要事項説明書の記載例】
| 加算 | 単位数 | 算定回数等 |
| 緊急時訪問看護加算 | ○○単位 | 1月に1回 |
| 特別管理加算 | ○○単位 | 1月に1回 |
| ターミナルケア加算 | ○○単位 | 死亡月に1回 |
| 複数名訪問看護加算 | ○○単位 | 1回当たり(30分未満) |
| ○○単位 | 1回当たり(30分以上) | |
| 長時間訪問看護加算 | ○○単位 | 1回当たり |
| サービス提供体制強化加算 | ○○単位 | 1回当たり |
特別管理加算の留意点
●特別管理加算(I)と特別管理加算(II)はどちらか一方しか算定できません。
●1人の利用者に対して1ヵ所の訪問看護事業所しか特別管理加算を算定できません。2ヵ所以上の訪問看護を利用している場合は、その分配を事業所の合議で行うことになります。
●介護保険における訪問看護の特別管理加算は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護の特別管理加算、医療保険における訪問看護の特別管理加算と同月に算定することはできません。

このコンテンツは
令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成致しております

