はじめに
居宅介護支援を行う介護事業者であれば押さえておきたい制度に「特定事業所加算」があります。
この資料は、居宅介護支援事業所における特定 事業所加算の算定に向けた前提となる情報を把握するために活用いただく資料となっています。
具体的な解釈や申請等については、公表されている最新情報をもとに、所轄官庁へお問い合わせいただきますよう何卒宜しくお願い致します。
特定事業所加算とは?
居宅介護支援における特定事業所加算とは、中重度者や支援困難ケースへの積極的な対応や、専門性の高い人材の確保、医療・介護連携への積極的な取組等を総合的に実施することにより質の高いケアマネジメントを実施している事業所を評価し、地域における居宅介護支援事業所の向上に資することを目的とするものです。
令和3年度の介護報酬改定では、性質の違いから現行の特定事業所加算(Ⅳ)の区分が廃止され、特定事業所医療介護連携加算に移行しました。また、小規模の事業所が事業所間連携により体制確保・対応を行うことで算定できる特定事業所加算(A)の区分が創設され、現行からある特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の区分について、単位数、算定要件の一部について見直しが行われています。
介護事業経営実態調査によると、居宅介護支援の経営状況は全国平均でマイナス収支となっていますが、その中でも、特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)を算定している事業所は黒字収支となっていて、特定事業所加算(Ⅲ)を算定している事業所は特定事業所加算を算定していない事業所に比べ収支差率が良い状況であることが示されています。
このような背景からも、特定事業所加算を新たに算定すること、そして、より上位の区分を算定することは、居宅介護支援事業所の経営にとても重要な取り組みとなっています。
特定事業所加算の単位数(2021年報酬改定の変更後)
| 加算の区分 | 単位数 |
| 特定事業所加算(Ⅰ) | 505単位/月 |
| 特定事業所加算(Ⅱ) | 407単位/月 |
| 特定事業所加算(Ⅲ) | 309単位/月 |
「特定事業所加算(A):100単位/月」の加算
小規模事業所が事業所間連携によって質の高いケアマネジメントを実現できるように、事業所間連携による体制確保や対応等を行うことを評価します。
(例)
特定事業所加算(Ⅰ)を算定し、利用者が月200人いる場合
505単位×200人×10円=1,010,000円
特定事業所加算(Ⅱ)を算定し、利用者が月200人いる場合
特定事業所加算の算定要件
| 算定要件 | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | A 1 |
| 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を配置 | 2人 | 1人 | 1人 | 1人 |
| 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を配置 | 3人 | 3人 | 2人 | 1人 |
| 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる介護支援専門員を常勤換算方法で配置 | × | × | × | 1人 |
| 利用者に関する情報等の伝達等を目的とした会議を定期的に開催 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 24時間連絡体制を確保し、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 要介護状態区分が要介護3、4、5である者の占める割合が100分の40以上 | 〇 | × | × | × |
| 当該事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 地域包括から支援が困難な事例を紹介された場合において、指定居宅介護支援を提供 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 地域包括等が実施する事例検討会等に参加 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 居宅介護支援費に係る運営基準減算又は特定事業所集中減算の適用を受けていない | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 介護支援専門員1人当たり40名未満(居宅介護支援費(Ⅱ)は45名未満) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 介護支援専門員実務研修の実習等に協力又は協力体制を確保 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 多様な主体等が提供する生活支援サービスを含めた居宅サービス計画を作成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
特定事業所加算を算定するまでの流れ
| 人材確保 | ・主任介護支援専門員の配置・介護支援専門員の配置 |
体制整備 | ・定期的な会議の開催予定・24時間連絡体制の確保・研修計画の作成・困難事例の受入体制・実習の協力体制・運営基準減算、特定事業所集中減算の対象外 |
| 利用者の人数・割合 | ・1人当たりの利用者が40名(または45名)未満・要介護3、4、5の利用者 |
| 所轄官庁への届出 | ・届出書、添付書類の提出・ |
| 重要事項説明書の変更 | ・重要事項説明書の変更・利用者、家族への説明 |
算定要件に基づく取組の実施 | ・計画に基づいた研修の実施・定期的な会議の開催・包括との連携、事例検討会の参加、他の居宅との事例検討会、研修会の開催・生活支援サービスを含めた居宅サービス計画書の作成 |
特定事業所加算を算定するまでの流れ
①人材確保
【特定事業所加算の人員配置要件】
| 特定事業所加算(Ⅰ) | ●常勤専従の主任介護支援専門員を『2名』以上配置していること。●常勤専従の介護支援専門員を『3名』以上配置していること。 |
| 特定事業所加算(Ⅱ | ●常勤専従の主任介護支援専門員を『1名』以上配置していること。 ●常勤専従の介護支援専門員を『3名』以上配置していること。 |
| 特定事業所加算(Ⅲ) | ●常勤専従の主任介護支援専門員を『1名』以上配置していること。 ●常勤専従の介護支援専門員を『2名』以上配置していること。 |
| 特定事業所加算(A) | ●常勤専従の主任介護支援専門員を『1名』以上配置していること。 ●常勤専従の介護支援専門員を『1名』以上配置していること。 ●介護支援専門員を『常勤換算で1名』以上配置していること。(非常勤可。) |
【配置のポイント】
●主任介護支援専門員と介護支援専門員は、別に配置する必要があるので、少なくとも(Ⅰ)では5名、(Ⅱ)では4名、(Ⅲ)では3名の常勤職員を配置する必要がある。
●(A)における常勤換算の介護支援専門員は、他の事業所の職務と兼務することが可。
②体制整備
1.定期的な会議の開催準備
定期的な会議の開催 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●利用者に関する情報の伝達、サービス提供の留意事項の伝達を目的とした会議をおおむね1週 間に1回以上開催すること。
●会議の記録を作成し、2年間保存すること。
【会議の準備のポイント】
●会議はテレビ電話等のICTを活用して開催することが可。使用する場合は厚生労働省のガイドライン等を参考にした社内の運用方法を定める。
●会議の年間開催予定を作成する。
●議題や会議録の作成方法を決める。
2.24時間連絡体制の確保
●24時間連絡体制の確保 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●24時間連絡体制を確保していること。
●必要に応じて、利用者等からの相談に対応できる体制を確保していること。
※(A)の場合は連携による体制の確保が可。
【24時間体制のポイント】
●24時間連絡体制とは、常時、担当者が携帯電話等により連絡を取ることができる体制。
●事業所の介護支援専門員による輪番制の対応も可。
●会社で携帯電話を契約する。
●輪番制のスケジュールを作成する。
●輪番制の対応に関わる手当等を設定する。
3.研修計画の作成
研修計画の作成 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●介護支援専門員の資質向上のための研修体系を定めること。
●研修実施のための勤務体制の確保について定めること。
●個別具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期等を定めた計画を年度が始まる前に作成すること。
●管理者が、研修目標の達成状況について、適宜、確認すること。
※(A)の場合は連携・共同開催による研修の実施が可。
【研修計画の作成のポイント】
●能力・スキルとそれを習得するための研修を研修体系として定める。
●事業所全体の研修計画と個人毎の研修計画を作成する。
●参考情報:従業者個人がどのような能力、知識、経験等を有しているかを把握して個人がどのような能力を習得したいか、事業所がどのような能力を習得させたいか、という視点から作成する。
4.困難事例の受入体制
困難事例の受入体制 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●地域包括支援センターから困難事例を紹介された場合でも、その利用者に居宅介護支援サービスを提供していること。
●事業所自ら積極的に困難事例を受け入れること。
●常に地域包括支援センターとの連携を図っていること。
【困難事例の受入体制のポイント】
●事業所の運営規程に記載する。
加算の届出に、「運営規程」の添付を求められることがあります。
5.実習の協力体制
実習の協力体制 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力または協力体制を確保していること。
【実習の協力体制のポイント】
●実際に実習の受入を行っていなくても、受入体制があれば可。
●研修の実施主体との間で実習等の受入れを行うことに同意している書面が必要。
③利用者の人数・割合
1.1人当たりの利用者が40名(または45名)未満
1人当たりの担当利用者が40名(または45名)未満 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●原則として事業所単位で平均して介護支援専門員1名当たり利用者数が40名未満であること。
●居宅介護支援費(Ⅱ)を算定する場合は、介護支援専門員1名当たり利用者数が45名未満であること。
●1名当たりの利用者数が不当に特定の職員に偏らないように配慮すること。
【居宅介護支援費(Ⅱ)】
居宅介護支援費(Ⅱ)は、適切なケアマネジメントの実施を確保しつつ、経営の安定化を図る観点から、令和3年度の介護報酬によって創設された区分です。
ICT(情報通信機器)の活用、または事務職員を配置し、業務等の負担軽減や効率化を図ってい る場合、(ⅰ)の区分の単位数を算定できる利用者数(特定事業所加算の算定要件になる利用者 数)が、介護支援専門員1名当たり45名未満となります。
2.要介護3、4、5の利用者が40%以上 要介護3、4、5の利用者が40%以上 ⇒(Ⅰ)の要件
●算定日が属する月の利用者の総数のうち、要介護3、4、5の利用者が40%以上であること。
●毎月、要介護3、4、5の利用者の割合を記録していること。
【要介護3、4、5の利用者の割合の留意点】
特定事業所加算を算定する事業所は、要介護3、4、5の利用者以外にも、常に積極的に困難事 例の受入れが求められています。
また、地域包括支援センターから紹介された困難事例に該当するケースは、例外的に、要介護 3、4、5の利用者の割合の対象外として取扱うことができます。
④所轄官庁への届出
特定事業所加算を算定開始する際、区分に応じて所轄官庁へ以下のような書類を届け出る必要があります。
| 【提出書類の例】 | 【添付書類の例】 |
| ●介護給付費算定に係る体制等に関する届出書●介護給付費算定に係る体制等状況一覧表●特定事業所加算に係る届出書 ●従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表 | ●主任介護支援専門員研修の修了証明書の写し●会議の定期的な開催を確認できる資料・会議 予定表 ●24時間連絡体制を確認できる資料●全体の研修計画書・個別研修計画書●運営規程 ●1名当たりの担当利用者数が確認できる資料●介護支援専門員実務研修実習受入事業所の登 録に関する同意書の写し●事例検討会、研修会などの実施がわかる資料●要介護3、4、5の割合の計算資料 など |
※具体的な提出書類は所轄官庁へお問い合わせください。
⑤重要事項説明書の変更
利用者と契約を交わす際、契約についての重要事項説明書には、事業所が算定する加算について記載する欄があります。特定事業所加算を算定することになった場合、重要事項説明書の加算の欄と、緊急時の連絡先等について状況を記載し、その内容を利用者・家族へ説明して同意を得ることになります。
※重要事項説明書の記載例
| 加算 | 加算額 | 内容・回数等 |
| 初回加算 | 300単位 | 1月あたり●新規に居宅サービス計画を作成する場合●要支援者が要介護認定を受けた場合に居宅サービス計画を作成する場合●要介護状態区分が2区分以上変更された場合に居宅サービス計画を作成する場合 |
| 入院時情報連携加算(I) | 200単位 | 1月あたり入院の日から3日以内に病院等の職員に必要な情報提供をした場合 |
| ・・ | ・・・ | ・・・ |
| 定事業所加算(I) | 505単位 | 1月あたり |
⑥算定要件に基づく取組の実施
1.計画に基づいた研修の実施
加算を算定するためには、研修計画に基づいた研修を実施しなくてはいけません。
| 【研修実施のポイント】 ●研修の実施にあたり、勤務体制を調整する ●研修の目標に対して、研修受講後の達成状況に確認する。 ●必要に応じて改善措置を講じる。 |
2.定期的な会議の開催
【包括との連携、事例検討会の参加のポイント】
●会議の目的は、『利用者に関する情報の伝達』と『サービス提供の留意事項の伝達』。
●議題には、以下の議事を含める。
● 現に抱える処遇困難ケースについての具体的な処遇方針
● 過去に取り扱ったケースについての問題点及びその改善方策
● 地域における事業者や活用できる社会資源の状況
● 保健医療及び福祉に関する諸制度
● ケアマネジメントに関する技術
● 利用者から苦情があった場合は、その内容及び改善方針
● その他必要な事項
●1週間に1回以上開催する。
●会議の開催状況を記録する。
●テレビ電話等のICTを活用して開催することが可。
3.事例検討会の参加等
包括が主催する事例検討会への参加 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●地域包括支援センターが主催する事例検討会に参加していること。
他の居宅との共同の事例検討会・研修会の実施 ⇒(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の要件
●他の法人が運営する居宅介護支援事業所と、共同で事例検討会、研修会等を実施していること。
●事例検討会の内容、実施時期、共同で実施する他事業所等について、年度が始まる前に計画を作成すること。年度の途中から加算を算定する場合は、届出を行うまでに計画を作成すること。
※(A)の区分では、連携先事業所と共同開催による実施が可。
【共同の事例検討会・研修会の実施の目的】
質の高いケアマネジメントを実施する事業所として、地域におけるケアマネジメントの質の向上を牽引するために、自ら率先して、他の法人が運営する事業所の職員も参加する事例検討会や研修会を実施することが求められています。
4.生活支援サービスを含めた居宅サービス計画書の作成
令和3年度の介護報酬改定により、特定事業所加算の算定要件に、こちらの項目が追加されました。
●必要に応じて、『多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービス』が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること。
【多【共同の事例検討会・研修会の実施の目的】
介護給付等対象サービス以外のサービスを指します。
●保健医療サービス。
●福祉サービス。
●地域住民による自発的な活動によるサービス。
※これらのサービスには、インフォーマルサービスを含みます。

このコンテンツは
令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成致しております

